The appi fome anthorogy
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安比派詩集   丹青老人詩
丹青老人詩文

       傾国(けいこく)

そこは滅びの国、

すでに天の川の水枯れ果て

天界の闇に星輝かず

赤子(せきし)の声は絶えて久しい

旅人は 草鞋(わらじ)を履いたまま家に閉じ篭り

その日も、
 僧侶は虎皮(こひ)(まと)い 葬儀に忙しく

商人は朝から(まつりごと)に口をはさみ

村人は物陰に集まり手をひらく

(さく)の番人 錠を忘れ 

下の役人 国を守らず家を守り

上の役人 
 小器を忘れ小銭を
ごまかすを知る

賢臣 物言えば僻地を任され

愚臣 常に外遊し

君主は美女の衣に眠る

詩人は独り楼閣を去り 

池の(ほとり)で釣り糸を()

農夫は畑に種を蒔き 
      豊穣の秋を待ち望む

賢者は森に隠遁(いんとん)し 
             晴耕雨読の風を読み

詩人は都に隠棲し 
      華胥(かしょ)()の国の夢を見る

赤子(あかご)は乳房で息をつき 滅びの国の夢を見た

 

そこは滅びの国、
    すでに天の川の水枯れ果て

天界の闇に星輝かず 
    人々の姿、そこに無い

 

学人 知性に溺れ霊性を失い 

哲人 思索に溺れ日常を失う

楽師 曲に溺れ声を失い

琴を忘れ宮廷にたむろする

絵師 貧困に溺れ絵筆を失い

富貴に我を忘れ美しさを失う

肥満した()は飲食に飽き節操を失い

痩身の() 異性に溺れその若さの艶を失う

乞食 貧しさを忘れ同情を失い

農民 無知に溺れ土地を失う

一族 墓のあることを忘れ
         調和を失い

兄弟 父母のあることを忘れ
          (どう)を失う

母 母性に溺れ子を失い

幼児は無邪気を忘れ徳を失う

力はその強さに溺れ柔らかさを失い

十は一であることを忘れ(かず)を失う

資本は生産を忘れその存在を失い

社会は無事を忘れ平和を失う

宗教は教祖偶像に溺れ真理を失い

科学は好奇に溺れ奇怪な者達を作り出す

そしていよいよ文明は、

摂理を忘れ緑の大地に春を失う

これすべて滅びの国

すでに天の川の水枯れ果て

天界の闇に星輝かず、草花植える土地も無い

 

ただ一つ、天の救いはここに在る

 

神は人を忘れて天界を創り

天は人を忘れて
  天地自然、天道万物を創世した

天網(てんもう)恢恢(かいかい),豊穣の海青く

天地玄黄、豊潤の大地 
      新緑の羽衣を(まと)

泉は清く風は舞い 

四季のうつろい
   律呂
(りつろ)
調陽(ちょうよう)
の調べを奏でる

これすべて人を忘れて美しく

滅び逝く、国も人も心も又、

はかなく美しい

       丹青老人詩